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08_ベジ工房(宮津市)

10月24日
読了時間: 7分

更新日:10月27日






FOCUS


丹後の生産者をご紹介




宮津市

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08_ベジ工房





会話から始まる、宮津のものづくり。


「建物は何かな?って、地元の人がふらっと入ってきてくれることが多いんです」 そう話すのは、宮津で食品加工に取り組む川崎さん。 工房を訪ねると、そこには不思議とどこか心地よい、 喫茶店のような空気がコーヒーの香りと共に残っていました。 それもそのはず、川崎さんには長年、喫茶店で働いていたのです。 「25年くらい飲食に関わってきたんです。 だから、ものをつくるより、人と接するほうが慣れてるんですよ」 そう話す川崎さんのものづくりをたどっていくと、 その奥にはいつも必ず、人の存在と温かな関わりがありました。

ベジ工房の作業場の一角

「一人でいるとどよーんとしちゃう」と話す川崎さんの周りには、今でも地元の方がふらりと訪れるそう。 作業場の一角には喫茶店時代の名残を思わせる漫画やカウンターが残っていました。

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きっかけは、喫茶店の思い出の味


川崎さんが飲食の仕事を始めたのは、今から長い時間をさかのぼる。 高校卒業後に勤めた会社を辞め、喫茶店で12〜13年ほどアルバイトとして働いたあと、 オーナーが体調を崩したことをきっかけに店を引き継ぎ、さらに10年以上。 「近所の人もたくさん来てくれて。 商工会議所も近かったから、いろんな人が集まってました」 人と話すことが昔から好きだった川崎さん。 しかし、市役所の移転によって人の流れが大きく変わり、お店を閉めることになります。 その頃、こんな声がかかるように。 「玉葱のドレッシングを持ち帰れるように売ってほしい」 お店で親しまれていた味を、商品にしてほしいというその声こそが、 現在の製造業へ踏み出す大きな後押しになったのです。 喫茶店から製造業へ。 川崎さんがカウンター越しに紡いできた会話は、新しいことが始まる入口でもありました。


・ 両親が残してくれた、玉葱から


転換期を迎えようとする川崎さんには、もう一つ出発点となったものがあったそう。 それは、もともと両親が農業を営んでいた畑の存在です。 両親が高齢になり、整理された広い畑をどうするか考えたとき、せっかくあるんだからこの畑の野菜を使ってみようと思い立ったのが、ドレッシングにも必要な玉葱でした。 宮津といえば海。 ものづくりを考えるとき、魚介類に目を向けるのも自然な選択かもしれない。 けれど、川崎さんが選んだのは、家族が長く耕してきた畑の野菜。 「魚は漁獲量の変動があるから、野菜にしたかったんです」 自分の身近にあるものを、どう生かせるか。 家族が残してくれた畑と、周囲から寄せられたお店の味を商品にしてほしいという声。 その二つが結びついたことでの新たな一歩が、 ―玉葱とわたし― でした。


ベジ工房の商品「玉葱とわたし」。ベジ工房さん設立のきっかけとなった商品。

こっくりと濃厚なドレッシング。玉葱とにんじんの甘味に加えてレモンのさっぱりさがやみつき。 濃いのにさっぱり、何回でも食べたくなる鮮やかな黄色のドレッシングです。


お話を伺っていると、地域の価値とは、 必ずしも外に探しに行くものではないのだと気づかされます。 身近にあるものを見過ごさず、人から寄せられた声と結びつける。 そのまっすぐな視点が、川崎さんのものづくりの土台になっているのです。

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会話の中に、次の可能性がある


こうして始まった工房には、さまざまな素材や相談が届くようになります。 セミドライいちご ―苺とわたし― が生まれたのは、コロナ禍でのこと。 宮津市内のホテルから、栽培していたいちごが余ってしまっていると、 相談を受けたのがきっかけでした。当時、持っていたのは乾燥機だけ。 「ドライフルーツしかできませんよ」そう答えたものの、 ホテル側の反応はあまり芳しくなかったようです。 それでも、川崎さんはドライフルーツの開発へと乗り出します。 目指したのは、果肉のやわらかい食感の残るセミドライ。 しかし、ただ乾燥させるだけでは雑味がでたり甘味が逃げたりと 思うような仕上がりにはならなかったそう。 いちごをシロップにつけてみたり、 一度低温で焼いて甘みを引き出してから乾燥させてみたり――。 この素材を生かすにはどうするか、まさに試行錯誤の日々が続きました。




苦労の末、完成した試作品を持ち込むと 「目から鱗でした」とホテル側から確かな手応えが。そしてそのまま商品化へ。 セミドライフルーツの ―苺とわたし― の誕生です。


ベジ工房さんがつくられている商品。左が手作りのこはく糖を上から見た天橋立の景色に見立て、ひとつひとつ手作りでつくりあげる「天橋立こはく糖」、右が宮津産苺を使用した「苺とわたし」。


一方、宮津で新しいお土産をつくろうという動きの中で生まれたのが ―天橋立こはく糖-。 素材は寒天とグラニュー糖のみ。 特別な素材ではないからこそ、松の輪郭や乾燥時間、温度、表面を覆う砂糖の結晶の具合まで徹底的にこだわり、商品としての美しさを極限まで高めていきます。 「宮津には若い人もきはじめていて、少しずつ火がついてる気がする」 訪れる人が変われば、お土産も変わっていい。 そんな考えから、商品のターゲット層は思い切って女性に絞りこみました。



「実験です!」と楽しそうに話す川崎さん。 いちごの相談から始まった商品づくりと、まちの変化を捉えたお土産づくり。 一見異なる二つの商品だが、そこには共通する姿勢がありました。 それは、目の前の素材だけを見るのではなく、素材が秘めた“可能性”を探りながら、 その価値がまっすぐに伝わる形を模索し続けているのです。 そんな川崎さんの商品名には、どこか愛らしい響きがあります。 「○○とわたし」シリーズの「わたし」は、川崎さん自身のこと。 間違いなく自分がこだわってつくっている、という想いやつくり手の体温を、 商品を通して伝えたいという願いが込められています。 地域の素材を使うだけでなく、その魅力を誰に、どんな形で届けるのか。 そこにも、川崎さんのものづくりへの深いこだわりが確かに息づいていると感じます。


ベジ工房の代表、川崎さん

笑顔で試行錯誤の様子をお話してくださる川崎さん。 その様子には自らで素材に向き合い続けてきたからこその自信と愛情が感じられます。


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「どうしよう?」から、また新しい商品が生まれる


川崎さんのもとやってくる素材はいつも思い通りになるわけではなく、 だからこそ、時間をかけて向き合い、どうしよう?とそのたびに考える。 近所の方々との何気ない日々の会話はアイデアへのヒントになり、 知恵を分けてもらう絶好のチャンスです。 「十分活用させてもらってます。コミュニケーションも上手く生かされてるなと思う。 これが私の良さかなと思います」と川崎さん。 人との関わりの奥にあるヒントを聞き取る力と読み取る力。 そして、仮説を立て、試し、確かめる力。 その組み合わせが、ベジ工房のものづくりを支えているのではないでしょうか。


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宮津のまちで育て、送り出す

古くから港町として人や物が行き交ってきた、海と山に囲まれた宮津。 北前船が各地の産品や文化を運んだ時代、このまちは港を通じて各地とつながり、 商いを育んできました。

そんな歴史をもつ宮津の中心地で、かつての港のように人がふらりと立ち寄り、 温かい会話が生まれている川崎さんの工房。


人との出会いや会話をきっかけに、新たな商品を生み出す川崎さんのものづくりには、このまちが大切にしてきた「人とつながり、商いを育む」日常そのもののようにも見えます。


  • 手作業で詰められていくこはく糖
  • 完成すると天橋立の景色になる

天橋立こはく糖はひとつひとつ川崎さん自らが手作業で詰めています。 天橋立の景色に見立てたこはく糖は、光当たるときらっと輝く見ても食べても思い出に残る商品です。


「ひとつひとつ娘を嫁に出すようにつくってます」 そう笑う川崎さんの言葉からは、 手仕事へのこだわりと商品への愛おしさが真っ直ぐに伝わってきます。

ひとつの商品が生まれるまでにある、たくさんの人との出会いや時間。

川崎さんによって育てられた商品は、宮津のまちからまた誰かのもとへと旅立っていきます。その先で商品を手に取った誰かはきっと、宮津の新しい魅力やそこに流れるあたたかさに触れていくはずです。


川崎さんのものづくりには、そんな人の積み重ねが、そっと詰まっていました。


店前に立つベジ工房の川崎さん



取材日:2026年9月

取材先:ベジ工房


Information:


ベジ工房

〒626-0017 京都府宮津市島崎2038



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82 Hirata Ine-cho,

Yosa-gun, Kyoto-fu 626-0423

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